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二物考
題言同国〈◯上野〉伊勢街(/いせいち)なる柳田鼎蔵と雲ふ者、一種の芋お贈れり、之お見るに、其形萆薢( /ところ)の如く、又土〓児の如し、土俗之お咬吧芋(/じやがたらいも)と称す、是れ即ち和蘭に所謂あるど、あつぷるなり、炮炙して之お食ふに、其淡白なること薯蕷(/やまいも)の如く、其甘きこと甘藷(/さつまいも)の如く、更に滋味粘気あり、其性毒なし、以て日用の食に充つ可し、和蘭地方単に之お以て食とする処あり、而して甘藷の寒お恐るヽが如くならず、寒地熱国に関せず、荒野瘠地お厭はずして、一根数十塊お得べし、〈◯中略〉丙申〈◯天保七年〉重陽之夜、高野譲識於東都麹街甲斐坂之大観堂、