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百姓伝記
十二
ほうづきお作る事一ほうづきの種今三色見へたり、地ほうづき(○○○○○)は節間永く、葉大きに育ち、さや大きにとおなりして、ほうづき小さく、秋の末ならでは熟せず、悪き種なり、さつまほうづき(○○○○○○○)と雲て、ふし合短かく、葉地ほうづきより小さく、さやもつまり、ほうづき大きにして、ふし毎になり、ぢく際より赤くなり、ほうづき大きなる種あり、又南蛮ほうづき(○○○○○○)共雲、ちんちくりん(○○○○○○)とも雲て、木たでふしにして、葉小さく、ほうづきのさや小さく、先お内へ押込たるやうにして、五月末つ方に赤らみ、大きなる種あり、必ふし毎になる見事なるものなり、土地に嫌ひなく育つ、然ども黒ふく土軽土、日蔭木下には忌むべし、ふし間延過、虫付て葉枯花落てほうづきなし、湿け地に猶能らず、種お二月蒔て夏中に実なり、秋に色付、夫は六つ箇敷きなり、植付の根お冬より正月の節に入まで植直してよし、其儘置ては茂く生へ出、木に病ひ付、ほうづきならず、植直すに根のふしお助け、ふし間より折て間お遠く植よ、肥え地に植ては、木蔓こり花付ず、瘠地に好みて植よ、