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重修本草綱目啓蒙
十三/毒草
莨菪 おにしるぐさ(○○○○○○)〈延喜式〉 おほみるぐさ(○○○○○○)〈和名抄〉 おめきぐさ(○○○○○) ほめきぐさ(○○○○○) やまさ(○○○) なヽつ桔梗(○○○○○)〈江戸〉 はしりところ(○○○○○○)〈肥後〉 一名狼蓎〈類書纂要〉 虎茄〈月令広義〉 草牛黄〈郷薬本草〉 牙疼子〈本草原始〉四中に漢渡なし、深山幽谷に生ず、宿根より早春に苗お生ず、紫黒色、長ずれば淡緑色、円茎高さ一尺余、葉は互生す、形は商陸の葉に似て小く狭し、又長葉なる者あり、〓葉の間に花お生ず、本は筒にして末は五弁、小き桔梗花の如し、色紫又黄色もあり、共に蒂は沙参桔梗花の蒂の如し、花謝して蒂漸く大に成て練子(せんだんの)の如く、淡緑色、中に細子多し、褐色なり、三月に実熟して苗枯る、根の形山萆薢(おにどころの)根の如し、誤て食へば其味腹内にあるあいだは狂気奔走す、故にはしりところの名あり、和俗誤て烟草お以て莨菪とす、大に非なり、これは証類本草及び綱目莨菪の図、実の形ち烟草の花に似たるお以て誤るなり、