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大和本草
六/民用草
煙花 たばこは、蓬渓類説に、淡婆姑草と雲、章州府志に、淡芭菰とかく、たばこ異国の方言なり、或曰、日本に初来り、丹波より其粉おきざみ出す、故に丹波粉と雲、此説妄語也、〈◯中略〉今案本草洞筌に所載の煙草も、亦淡婆姑と同物なり、今南京には烟と雲、章州福州には芬と雲、きざみたばこお切芬と雲、朝鮮にはたばこお南草と雲、〈◯中略〉今国俗すべて莨菪おたばこと訓ず、あやまれり、中華に莨菪は古よりあり、延喜式に莨菪おのせたれば、日本にも昔よりある草なるべし、たばこは日本にも中華にも古はなし、近代外国よりわたると雲、故に本草綱目にはのせず、〈◯中略〉長崎にて、唐人はみな煙草と雲、莨菪とはいはず、是お以莨菪に非る事おしるべし、