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烟草百首
上州館秩父館大山田の土葉、江戸にて用ざる烟草は、大坂へ登事火し、彼地にては土砂お箒、豊後葉お以巻、鐁にて切に、一日に壱人にて三四十斤切事也、細く猫の毛のごとく、手ざわり至て和らか、然れども油のしめりぬけざる故、快晴の日に干、能乾し、日お経て売出す、甚油臭し、味も土葉なれば下品なり、唯和かにして火お点ずるによく、価賤しきお賞してこれお吸、関東の人、此油の匂ひお嫌ふ、鐁にて切工能せしもの故右に図す、〈◯図略〉