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烟草百首
頭書
功能佗波古は、〈◯中略〉霜露風雨の寒お御ぎ、山蠱鬼邪の気お避、小児食て疳積お殺し、婦人食へばよく癥痞お消す、気血お廻し、二便お通じ、悪瘡お治す、〈◯中略〉大飲飽食して腹脹満時、二葉お採、熱灰お其中に包、暫ありて腹の上お按(もむ)ときは、其脹即解す、〈◯中略〉煙草の水お絞て膏薬に入る時は、能痛お止、膿お吸、腐肉お蝕し肌お生ず、金瘡によし、皆人即時の血留にするお以、功能しるべし、葉色青緑なるお錫蒸(らんびき)にして、其露お採、硝子器に入置、金瘡悪瘡腫物一切にぬる時功有、又眼かすむ時は、眶にぬりて寝ときは、翌旦あきらかに見ゆ、きせるの脂にても妙なり、水腫には、烟草の末お香炉に焚、烟お呑、其水気能消す、又吐剤にも用、粉お熏らし、これお嗅ば嚏ことお止、灸治お嫌ふ小児には、きせるの脂おとり、灸点におす時は虫の病お去、大人にも功能あり、蛇蚖諸蠱此烟お嫌ふ、蛇の皮お剥、一葉お刺時は速に死、又これお薫しても宜し、きせるの脂口にいるヽ時は死、蚤虱蚊遣に用ゆるは、皆人の知る所なり、諸鳥犬猫、皆烟気お悪、独猿のみこれお好、又金魚などの病つきたるに、烟糞(ふきから)お集め、鱗おこくときは忽活、奇妙なり、烟草の実お食へば、胎お堕といふ、味噌汁塩湯冷水其毒お解す、烟毒お解には、砂糖檳榔子よし、又多く服して酔て頭痛する時は味噌汁よし、なき時は生味噌嘗、烟毒方麦門冬 紫蘇子 瓜蔞仁 枇杷葉 甘草〈右等分〉 砂糖〈一両〉痔疾には、脂深き烟草の刻たるお丸め、肛門にはさみ居れば、忽痛お去、烟草の黒脂(やに)、竅お塞通ざる時は、味噌汁塩湯奇妙也、和国の人は常に是お飲故脂の患なし、烟脂衣類につきたるには、瓜子仁お砕て洗ば即去、又味噌汁の熱にて洗ても忽散ず、又昆布お噛、汁おとりて揉あらうも又良といふ、