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農業全書
三/菜
狐種る法肥地お深く耕し区(まち)お作り、深さ広さ各一尺ばかり、杵にて土おつきかため、うるほひの下にもれざる様にして、其中に肥たる土お入、蚕のふん或鶏家鴨の糞などお多く入おし付、水おかけ、土と思ひ合せ、たねお四粒宛入、灰糞お以ておほひ、生出て後も力次第、糞水お度々そヽぎ、つる長く成てはなり花お見て先お留べし、あやしき屋の上にはヽせ、或は棚おゆひて、其上にまとはするもよし、地にはヽする時は、瓜の下に、わらなどおしかせ、折々上お下に取返しおくべし、又手にてなでさすれば、ながくはならずして厚く成ものなり、三月うへて、八月収むべし、器物にするは、よく熟し堅くなりたるお取て、水湿なき地お四五尺も深くほり、わらかこもお、土肌にしき隔て、下には尚厚くしき、狐お其中に頭の方お下にしてならべ、土お二尺ばかりおほひ、廿日ほどして取出せば、黄色に成たるお、口おきりあけ、さねお出し、それ〴〵の器物とすべし、〈◯中略〉又大瓢お作る法、穴お深さ広さ各三尺ばかりに掘、其中に糞と土とお等分にまぜ合せ、穴の中一盃に入ふみ付、底までしめりとおる程水お入、水のひいるお待て、たねお十粒ばかり、ばらりと蒔、土糞おおほひ、生じて長さ二尺余の時、十筋のつるお一つに取合せて、土ぎは五六寸ばかりお布にて巻、其上お苧お以てまとひ、其上お泥お用ひて厚くぬりおけば、十日も過ずして、巻たる所付合て、つる一筋に成なり、其茎の中にてうるはしく性の強きお、一筋残して、余は悉く切去べし、其後一つのつるお棚に引上れば、やがて花咲実お結ぶ、其内にて性のつよく、難なくふとるべきお一つ二つ残し、余は枝おも皆々つみ去べし、つるのさきおも長くはのばすべからず、但もとなりの一つ二つは、つる付よはくて、ふとりて後あやうし、中なりのふとるべきお二つ残し置べし、もし旱せば、たび〳〵水おそヽぎ、つねにうるほひお持すべし、かくのごとくすれば、水の四五斗も入ふときが出来るものなり、十筋のみにかぎらず、二筋三筋にても、右のごとくゆひ合せ、糞お多く用れば、如形ふとし、又苗おうへおき、三月移しうゆる事冬瓜に同じ、