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太閤記
十五
秀吉公異形の御出立にて御遊興之事文禄三年六月廿八日之事なるに、瓜畑などひろく作りなしたる所において、瓜屋旅籠屋お、いかにも麁相にいとなみ、瓜あき人のまねおなされつヽ、各おも慰め、又御心おも慰み給ひつヽ、長陣の労お補ひ給ひしなり、御出立は柿帷おめされ、わらのこしみの黒き頭巾、菅笠お御肩に物し、味よしの瓜めされ候へ〳〵と有しは、聊商人に違ふ所もなふて、つぎ〳〵しく有しなり、〈◯中略〉一〓波中納言秀勝は、漬物瓜おになふて、かりもりの瓜、瓜めせ〳〵とふつヽかに、のヽしり給ひしが、ぶてうほうに有しなり、げにも若きは何事も無功に有よなど思はれて、年はよるべき物なり、いやよるまじき物でも有と雲人も多かりしなり、