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安斎随筆
前編十五
南瓜 かぼちやと雲、一名ぼうふらと雲、かぼちやは其出処の地名にてぼうふらは其瓜の変名なるべし、暹羅と雲国の東南に占臘国あり、又真臘とも書く、一名柬埔寨とも雲、かんぼちやとよむ、採覧異言に見たり、此かぼちや瓜、予〈◯伊勢貞丈〉が幼少より弱冠のころ、享保年中までは市にて売らず、無が故也、希に人の家園に種る者も有し、長崎などより、其種お伝来せしにや、常見なれざる物なれば、毒物ならんかとて、食せざる人もありし、元文の頃より所々にて種へ弘めて、今は市に多く売り、夏秋の菜物となれり、