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農業全書
三/菜
南瓜南瓜是南方よりたね来る故、かく雲なるべし、甘瓜西瓜のごとく、菓子になる物にはあらず、猪肉、鶏、鴨のあつ物、其外魚鳥と合せて煮て食し、料理色々あり、唐人甚賞す、西国にては賞玩する物なり、農書に、陰地によしとあれど、日あて能所よし、うへ様西瓜に替事なし、区(まち)お広く深くし、蒔付にも、又苗うへもよし、取分海辺夕風の当る、南向の肥地沙地に宜し、鶏家鴨の糞など多く用ひてなる程肥し、草屋の上にはヽせ、又高き岸などに引上、或は棚おかき、冬瓜夕がほのごとくするもよし、柴など折しきて、平地にはヽするもよし、根の廻り五三尺の間、いかにもよく肥して、つるのゆくさき〴〵は、芝原猶よし、土手などある所ならば、是又宜し、或屋敷の肥地に根お種へ、民の屋の上にはヽせ、又は前に雲ごときの空地、屋敷の辺にあらばはヽすべし、勝れてつる長くはふ物なれば、よき畠には作りがたし、但やせ地に糞すくなくては盛長せず、又是もさきお留る事なし、深き肥たる砂地に、糞にあかせて作りたるには、甚ふとき瓜、一本に二三十もなる物なり、いか程もふとく外堅くすね、色あかく成たる時取て、下に竹のす又は蘆、すヽきなどの簀おしき、日のあたらざるにはの内などにならべ置か、又かづらにて痛まぬやうにからげ、屋の内につり置もよし、