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柳庵雑筆

寛文五年作者不知東海道路の記に、袋井に泊り、行水し侍るに、むさきへちまお出しければ、心なくむさきへちまお出す哉たん袋井の宿のおかかは、と見ゆ、当時湯殿にて糸瓜お以て垢すりしと知る、農業全書に、其上皮おさり、其筋あらき布の如きおもみ洗ひ乾かし、是にて器物おあらへば、たとひ塗たるものにても、引めも付ず物の垢およくとり、又湯手に用て甚よしと雲と、合考ふべし、南宋の僧断崖の詩に、不成蔬菜不成瓜、沿墻傍壁也開花、隻与諸人除垢穢、不知自己一団滓、とあるにて、西土にも垢除に用ふることしるべし、又本草にも釜器お滌べし、故に村人洗鍋羅瓜と雲とあり、