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重修本草綱目啓蒙
十四/蔓草
栝楼(○○) きからすうり〈王瓜に混ずる故に、黄の字お冠す、〉 くりうり〈越前〉 みづからすうり〈同上〉 かるり〈伯州〉 ごうり〈筑前、肥前、〉 ごり〈薩州〉 うしごうり〈筑後〉 からすこんび〈予州〉 うしこべ〈豊後〉 やまうりかづら〈泉州〉 にがうり〈城州貴船〉 むべうり〈同上〉 こびのこ〈土州根名〉 烏塊〈和方書実名◯中略〉春旧根より苗お生ず、蔓甚長く葉互生す、形ち円にして五七尖あり、胡瓜葉に似て毛茸なく光りあり、王瓜葉の厚くして毛刺あるに異なり、一葉ごとに数鬚ありて物に纏ふ、五月葉間に白花お開く、本は筒子、末は円に闊く五出にして、洛陽花(さづまなでしこ)の如し、弁末細く分れて乱糸の如し、花後瓜お結ぶ、王瓜より大にして微短、生は青く熟すれば黄色、王瓜の形小にして、熟して赤色なるに異なり、瓜お用て醤蔵塩蔵し食ふべし、瓜中に黄肉あり、味甘し、肉中に子あり、即栝楼子なり、〈◯中略〉栝楼の根は、土中に長く蔓延し、葛根の如し、或は連珠して瓜の如く白色なり、採乾して用ゆ、切れば内に花紋あり、冬月〈夏は粉少し〉葛粉お製する如く、水飛し粉お採るお天花粉と雲ふ、〈◯中略〉王瓜(○○) からすうり たまづさ きつねのまくら〈丹波〉 ごうり〈筑後〉 たまづさごうり〈筑前〉 むすびぜう〈阿州〉 ぐどうじ〈土州〉 ぢやうちごふ〈予州◯中略〉路傍林側籬辺に甚多し、春旧根より苗お生ず、蔓長して線稜あり、葉互生す、共に深緑色にして黒色お帯ぶ、葉の形円にして尖りあり、或は三尖或は五尖斉しからず、皆鋸歯あり、体厚く毛刺あり、一葉ごとに鬚ありて瓜の鬚の如し、五月葉間に白花お開く、形栝楼花に異ならず、其瓜大さ倭鶏卵の如し、栝楼より小にして長く、秋冬熟して朱紅色なり、瓜蔞実の形大にして、熟して黄色なるに異なり、