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古今要覧稿
草木
したつき〈すヽめうり 仙沼子 合子草〉したつきは、一名すヾめうり、一名すヾめのうり、一名ひめうり、一名よめのごき、一名よめがさら、一名ごきづる、一名からすのごき、一名ひなのかうし、一名かはほうづき、一名からすのごきづる、一名よめのわん、一名きんぶんしきといひ、漢名お仙沼子、一名合子草、一名盍合子、一名〓知子、一名〓先子、一名預知子、一名救疾子、一名神変子、一名総持子、一名馘毒仙、一名詔子といふ、此草はいづれの国にても、池沼及び溝渠のかたはらに多し、春苗お生じ蔓おなし、葉は一種の馬〓児葉に似て長く、又頗る旋華葉に似て三尖あり、葉ごとに細鬚ありて、物おまとふ事、又馬〓児の如し、夏に至れば、その葉の間に白花お開き後実お結ぶ、大さ棗の如し、其中に二子ありて、形亀子に似て至て小にして、又頗る縮砂の仁のごとし、その子嫩なる時は、外皮白くして中に粘汁あり、老る時はその汁凝りて仁となり、外皮黒色に変じ、曝乾すれば、又灰色或は淡褐色に変ず、その味少しく苦し、此子おとりて延喜の比には、漬物の料と〈延喜式〉せしお、又旋用多験と〈本草和名〉いひ、又治一切風、補五労七傷、其功不可備述〈日華本草〉いふ時は、たヾ食料に供せしのみにはあらず、それより降りて永暦承安の比に至りては、后宮御懐妊の時は、必ず此子二七粒お典薬頭より奉りて、御著帯の中へ入て、専ら催生の料に供せられしなり、〈山槐記、玉海定長卿記、〉それお奉るに和気氏より奉れるは、皮お除かざれども、〓波氏より奉れるは皮お去ると〈医師経長記〉いへり、又その数お二七粒に定められしは、まさに盍合子催生雲々、又治一切病、毎日取仁二七粒と〈日華本草〉みえたるによりてなり、また方言本草に、預知子難産に用ゆ、又産前に三十粒お帯に付るは、〈按にこヽに三十粒お帯に付るといへるは、日華本草に患者服不過三十粒永差といひしによれる也、〉まさに産する時に用ゆべき為也といひ、又万安方の六物麝香丸の方中に仙沼子あり、小児大人腹脹気塊お治すといへり、かく功能多き一奇薬のいと得やすきものお、今にいたりては、絶てこれお用ゆる事おしるものなきは、くち惜き事也、扠図経本草に、預知子蔓生、依大木実作房、初青至熟深紅色、毎房有子、五七枚如皂莢子、斑褐色といひしは、これと同名異物也、