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重修本草綱目啓蒙
十一/湿草
敗醤 おもひぐさ(○○○○○)〈万葉集〉 このてがしは(○○○○○○) おみなへし(○○○○○)〈共に同上〉 女郎花〈和名抄、古今集、〉 おみなめし(○○○○○) おみなえし(○○○○○)〈備前〉 ちめぐさ(○○○○)〈和名抄〉 菊花女 一名苦薺菜〈薬性奇方〉 増、一名若〓菜、〈古今医統〉 若遽菜〈名医類案〉種樹家に多く黄花のものお栽ゆ、即女郎花なり、又山中に自生もあり、春旧根より苗お生ず、葉は玉帚の葉に似て多く叢生す、円茎高さ三四尺、節に対して葉お生ず、菊葉に似て岐深し、梢に至れば、変じて艾の梢葉の如し、夏の末花お枝梢に簇生す、未だ開ざる者は細砕にして、粟粒の如く深黄色、已に開く者は五出にして色浅く、臭気あり、採て瓶花に供す、是黄花の敗醤にして、救荒本草の地花菜なり、時珍説くところの者は、白花の者お指す、即男郎花(おとこへし/○○○)〈和名抄〉なり、又南楼花〈同上〉に作る、おめし、おほとち、おとこおみなの花、〈共に古名〉とちな、〈信州、土州、〉みるな、〈勢州〉山野に自生多し、苗葉黄花のものより肥大なり、脚葉は岐深くして、たまぼうきの葉に似たるもあり、又岐なくして細鋸歯あるもありて変葉多し、皆短毛臭気あり、円茎高さ四五尺、四月より秋に至まで白花お開く、黄花の者より大なり、又一種春のおみなめし(○○○○○○○)と雲あり、一名かのこさう、きぬまき、さくらがはぐさ、これに雌雄の二種あり、雄なる者は葉黄花の敗醤葉に似て小なり、薄くして尖れり、三月に花お開く、紅白相雑る、故にかのこさうと雲、雌なる者は小草なり、高さ一尺許、花葉ともに小なり、深山幽谷渓側に多し、俗に和の甘松と雲は誤りなり、根甚細小にして臭し、全く甘松の類に非ず、又一種加州の白山より出るもみぢばのおみなめし(○○○○○○○○○○)あり、一名白山おみなめし、種樹家にて金鈴花と雲、円葉にして四岐及び鋸歯ありて、かへでの葉の形に似たり、対生す、茎高さ一尺許、五月花お開く深黄色、白花の敗醤花より大なり、是蘇恭説ところの敗醤これなり、凡敗醤は根より長きつるお四方へ引き、小葉両対す、忍冬葉に似て敗醤あり、隻白山おみなめしはこの蔓なし、増、白花敗醤は、花の形黄花の者より大にして花後に実あり、百合実に似て小なり、花後根もとより蔓の如く枝お生ず、長さ五六尺横行す、其蔓に生ずる葉は円長く、小判の形にして茎に対生す、毎節鬚根お生じ、此より又苗葉お生じ、翌年に至て大に繁茂し、旧根枯る、又子お蒔てよく生ず、根は牛蒡根の如く、苗根共に臭気あり、一種さみだれおみなへし(○○○○○○○○○)、さつきおみなへしとも雲ものあり、春月地に布て七八葉攅り生ず、初夏茎お抽す、高さ三四尺、葉茎に対す、葉の形紫菀の小なるが如くにして、刻ある者あり、刻なきものあり、茎に生ずる葉は漸く小なり、四月の末花始て開き、五月に盛なり、故にさみだれおみなへしと雲、黄色にしておみなへしの花と同じ、根株蔓お生ずること亦同じ、