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草木育種後編
下/薬品
黄芩(わうごん)〈本草〉 和名やまひヽらぎ、〈和名抄〉俗にこがねやなぎといふ、花に白と碧とあり、享保年中、将翁先生〈◯阿部〉甲州より採り得、官園に上る、又漢種も享保年間、唐山より来る、予〈◯阿部喜任〉会津山中にて自生のものお得たり、形状皆同じ、根腐りて上品なり、春分の比、畦に種子お布て生ず、其年に花実あり、当時江戸近郊にても多く作る、是お真の黄芩といふ、作り方悪しき故に、薬用に下品なり、山中赤土の地お選み、是に畦お作り、草綿子(わたたね)糠の類きり雑へ、是へ種子お布き、其後は糞水も少しも澆ぐ事なく、七八年過堀り出し見るべし、蘆頭腐りてよし、世間にて作るは斤両の減ずる事お恐れ、糞汁多く用ひ、三年にして堀る故に功なし、又山中野地の分ちなく、ふり蒔にして数十年の後採り得は、自然生の如く弥上品なるべし、