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農業全書
六/三草
茜根(あかね)あかねは、山野におのづから生るも多き物なれども、土地お吟味し糞(こや)し、手入して畠に作るにしかず、土の色黄白にして性よく、和らかなるよし、又は青色にして沙交り、又赤土もよし、黍お作りて、其跡お四五遍も耕しこなし、熟糞お多く用ひて、冬より晒しおき、三月うゆる時、いかにも細にして、たねお蒔べし、蒔終りては、うすく土おおほひ、少たヽき付おくべし、畦の中草少もおくべからず、取わき草痛みする物なり、たねお取おく事は、甫に作りたるにても、又は山野に自らあるにても、九月よく熟し黒くなりて、已にこぼれ落んとする時、取て日に干、俵か籠などに入おくべし、又は山野に生たるお、九十月根お多く堀取て苗とし、畦作りし間遠にうへて糞(こや)し、手入したるも、盛長みすやかなる物なり、肥地によき糞しお多く用ゆれば、根甚さかへ、染付もよく厚利の物なり、山中など其外五穀お作るにはさはり有て、肥良の地あらば必作るべし、