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草木六部耕種法
四/需根
茜草紫草の根お作る法茜草山野の自然生は、其根煎汁色濃して上品なり、然れども多く得べからざるお以て、此お作るの法有て、自然生に劣ざる上品お出す、我家の作法は、真土及櫨土にても、白黄赤三色の土お撰て、此に軟膨(ぼやす)の法お行ひ、冬中より厚く糞肥お用ひ置き、春に至り再能く細耕し、善種お間疏に蒔散し、少し土お覆ひ押付置ときは、日あらずして芽出者なり、因て他草お〓て耘除べし、又秋末に山野の自然生お掘り来て、種とし植るも能く肥る者なり、且此物は七八番の煖気の地に蕃生す、故に寒国の産は紅色淡し、殊に黒土暗青黎赭等の土に植たるも、染色鮮明ならず、又此物と紫根鬱金等染料お作るには、其根肥太する法の外に、其染色お濃厚にする培養法あり、其事は鬱金の条下に詳にす、抑染料も国家必用の品、此茜染精好なるは、紅緋に亜て美艶なり、故に茜根お上品に作ときは、其利潤紫根に異なること無し、