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閑田次筆

此種〈◯菊種〉奈良の御代までは、いまだ渡らざりしが、万葉集中には見えず、されば字音のまヽにてよびならへり、新撰字鏡にからよもぎといひ、又世に翁草などいふも異名なり、日本後紀に、桓武帝の御作歌、此ごろのしぐれの雨に菊の花ちりぞしぬべきあたら其香お、と遊ばせしが見ゆれば、此御代のころはじめて来りしにて、こなたにては初より色香おめづることとおぼしき也、