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重修本草綱目啓蒙
十/湿草
菊〈◯中略〉花お賞する菊には、春夏秋冬の分ちあり、皆花開く時お以て名く、其冬菊(○○)は即寒菊なり、漏蘆の条に、単葉寒菊の名あり、秋後花さく、葉に酒お澆げば、霜お蒙て紅紫色に染て美なり、唐山にて賞する秋菊(○○)は、今の中菊にして、本邦にて賞する大菊にはあらず、範成大劉蒙史正志等の菊譜、及び花史左編群芳譜、秘伝花鏡に詳に載す、和書にては菊経に詳なり、又人家盆玩にまんぎく(○○○○)と雲あり、一茎多枝にして花甚繁密、傘お開くが如し、是数次心お摘去て、多枝ならしめて花多きなり、土州にて、あめがしたと雲、讃州にてかさぎくと雲、漢名満天星〈群芳譜〉と雲、又千弁黄色にして、大さ三四分なるお、こがねめぬき(○○○○○○)と雲、是集解容の説の珠子菊なり、これにも紅白紫間色数種あり、野菊(○○) あぶらぎく せんぼんぎく いはやぎく 一名薏花〈抱朴子〉山足路傍に多し、原野には希なり、一科叢生す、苗高さ三五尺、枝お分つこと最繁し、故に千本ぎくと呼ぶ、葉は花岐多くして鋸歯密なり、茎葉浅緑色、断ればその気艾の如し、秋晩花お開くこと甚多し、単弁にして大さ四五分、心大にして弁短く、微しく香気ありて黄色なり、その味苦し、故に一名苦薏と雲、世に此草おかもめいりとするは穏ならず、蛮書の図に異なり、和名にのぎくと呼ぶものは、救急本草の鶏児腸なり、混淆すべからず、旋覆(おぐるま)にも野菊の名あり、