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一話一言

菊の名垂加草に雲、大源庵菊、其白者名大牡丹、花様如牡丹也、其黄者名真盛(さねもり)、種自越前出也、〈真盛越前之産〉また支考が菊合序に、宝永のはじめより、夷洛に此花お玩びてとあれば、久しき事にはあらじ、序中に見へし菊の名は、初霜 薄雪 金より 銀より 小金めぬき 濡鷺 香炉峯 釜山海 金鸞 銀鳳 御法 村雨 小手巻 李将軍 飛鳥川 きなこ鳥 白臥竜 月下門 宇治 ふしみ 山崎 有明 花麒麟 金翅鳥 紫金竜 朱雀門 婆羅門 阿蘭海 衣通 三人鑑 大和笠かばかりの事も、時々に違ひて、今の花は昔の名にはあらじ、金(こがね/○)目貫(/○○)といふ菊お、今省きてきんめ(○○○)といふ、続山井、こがねきくは霜の剣の目貫かな、〈倫加〉後撰夷曲集、浄華院にて〈八宮御方〉葉までよく咲みだれたる作りやう、金目貫の菊一文字とあれば、前の発句も、金目貫の字おわけて作れる句とみゆ、こがねとばかりは、黄菊おすべていふやうなり、