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年々随筆

から国にては菊は黄なるおめづめり、詩どもにも黄菊黄花などぞきこゆる、皇国には置まどはせると、霜によそへしよりはじめて、しろきおむねといひならはしたり、まことに手おつくしたる、くさ〴〵の色よりも、白菊黄菊のいたく大ならず、又小くもあらぬお、わざとつくろひなどもせでさかせたる、此園の中など、そこらの松影に、匂ひみちたるこそおかしけれ、そがきくとは、黄菊のことなりといふ、さる事にや、何がしとかやきこえし連歌師の句に、黄菊白ぎくその外の名はなくもがな、さる事也、