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重修本草綱目啓蒙
十/湿草
菊〈◯中略〉菊花種類多し、大抵二品に分つ、薬食に用る菊と、花お愛する菊となり、薬用の菊は甘菊なり、本草に説ところは此ものお指す、甘菊は元来色の黄白に拘らず、味甘き者お用ゆ、然れども今本邦に伝へ栽る者は皆黄色なり、和名あまぎく、又料理ぎくとも雲、九月に花お開く、大さ寸許、或は寸余、弁は常菊とちがひ、細筒子にして、末五出、弁多く重て心なし、変じて闊弁となれば、黄色淡くなりて、中に小心あり、此菊花葉共に苦味なくして、食料に充べし、故にりやうりぎくと雲、此花薬用に良とす、今薬舗の菊花は、奥州仙台より出す、常の黄菊にして味苦し、又夏菊お用る人もあれども宜しからず、