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平家物語

月見の事徳大寺の左大将じつていの卿は、ふるきみやこの月おこひつヽ、八月〈◯治承四年〉十日あまりに、福原よりぞ上り給ふ、なに事もみなかはりはてヽ、まれにのこる家は、門前草ふかくして庭上露しげし、よもきがそまあさぢが原、鳥のふし戸とあれはてヽむしのこえ〴〵うらみつヽ、くわう菊しらんの野辺とぞなりにける、