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源平盛衰記
二十六
蓬壺焼失事六日〈◯治承五年閏二月〉八条殿も焼ぬ、此所おば八条殿の蓬壺とぞ申ける、蓬壺とはよもぎがつぼと書けり、入道〈◯平清盛〉蓬お愛して、坪の内お一しつらひて蓬お植、朝夕是お見給へ共、猶不飽足ぞおぼしける、されば不斜造り瑩れて、殊に執し思ひ給ければ、常は此蓬壺にぞ御座ける、