[p.0715]
重修本草綱目啓蒙
十/湿草
茵蔯蒿 かはらよもぎ(○○○○○○)〈青蒿黄花蒿にもこの名あり、混ずべからず、〉 ねずみよもぎ(○○○○○○) こぎ(○○)〈遠州〉 ふなぼうき(○○○○○)〈芸州〉 はまよもぎ(○○○○○)〈加州〉 いぬよもぎ(○○○○○)〈和州、同名あり、〉 一名〓蔯〈正字通〉 蓍蒿〈同上〉 加外左隻〈郷薬本草〉 加外作隻〈村家方〉 加火老隻〈採取月令〉 増、一名綿茵蔯〈本経逢原〉山野共に自生多し、山にあるお山茵蔯(○○○)と雲、野にあるお野茵蔯(○○○)と雲、家に種て薬用に供し、食料に入るヽお家茵蔯(○○○)と雲、別種に非ず、生ずる所に因て名異なり、本邦は山野の二つのみにして家茵蔯は希なり、初に生ずる葉と茎上の葉と形色異なり、秋より春までの間は、地に就て叢生す、青蒿葉に似て白毛多し、故に此嫩なる時お白蒿と名く、容の説に、階州一種白蒿一似青蒿而背白と雲是なり、救荒本草に白蒿と雲も、茵蔯蒿の嫩葉お指す、本条の白蒿と同名異物なり、春以後漸く台お抽で、高さ二三尺に至る、葉互生す、形漸く細くなり、梢に至りて愈甚くして糸の如し、状茴香葉に似たり、深緑色にして白毛なし、梢葉の岐八方に分る、故に八角茵蔯と雲、夏秋の間、枝梢葉間ごとに花お生ず、甚密にして後には穂の如くなる、花は艾の花に似て至て小く色白し、秋深て苗枯る、実熟し落て自生す、其茎の本は枯れずして更に嫩葉お生ず、又根よりも新葉お生ず、皆白毛ありて細ならず、茵蔯は茎根共に枯れず、陳茎に因て再び葉お生ず、故に茵蔯の名あり、青蒿の茎根共に枯るヽに異なり、薬舗に売るは多く青蒿お混ず、又神麹に用る青蒿にも茵蔯雑る、二草の梢葉似たる故なり、宜く分別すべし、〈◯中略〉増、一種はまいんちん(○○○○○○)、海浜の砂地に生ず、高さ六七尺、茎葉花実共に相似て、大に長ずと雖ども、白毛去らず、下品のものなり、薬用に入れず、