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農業全書
四/菜
萵苣ちさ種々あり、葉の丸きあり、長きあり、長くとがりたるあり、緑色なるあり、うす黒きあり、紫もあり、中にて葉丸くひろく、たうおそく立、久しくさかへ、和らかにして味甘く、五六月まで、葉のさかんなるあり、是お求めてうゆべし、是は六月にたねお取おきて、八月早く蒔べし、肥地おこしらへ置、苗さかへたる時、畦作りし、よきほどにがんぎお切、六七寸に一本づヽうゆべし、糞水お根のわきよりそヽぎ、泔水小便お、二三日に一度づヽ少あて、朝そヽぎたるは、よくさかへやはらかにして、いか程かぎとりても尽る事なし、苗ふとり次第、十月霜月正二月にかけうゆべし、されども年内うへて、細根よく出、あり付たるは、春になりてよくさかへはる物なり、春になりてうへたるは、葉しげからず、其さかへおとるものなり、是も四季ともにたねお蒔て苗お食し、いつもやはらかにして、腹中おなめらかにし、色々料理に用ゆる物なり、又四月たうの立たるお折て、皮おさり水に漬、苦みおぬかし、醋に浸し、膾のつまにし、紫蘇漬などにし珍敷物なり、種子お取には、花咲実らむとする時、末お折かけて置べし、其まヽ置たるは粃多し、蚊花お吸故に実り少し、梅雨の時分、外に有て、花房雨お受て黒く朽るが故也、何れにても枯ぬ程に折懸置べし、