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農業全書
四/菜
欵冬欵冬は旱おおそるヽ物にて、終日よく日の当る所に種べからず、樹のかげの肥地、其他陰地の深く肥和らかなるにうへ、さい〳〵泔おそヽぎ、或酒の糟の汁おかくれば、よくさかへ和らかにふとくなる物なり、猶水こえかれこれ多く用るにしかず、九月に打返し土お和らげ、改めうゆべし、又は熟地おかまへ畦作りし、冬春早く分てうへ、糞水おしきりにそヽぎ、泔糟の汁おかくれば、肥たる陰地なれば、甚ふとく長くなりて、市町近き所は是お売て、利潤多き物なり、才のせばき畠にても、他の菜のおよぶ事にあらず、又是に二色あり、茎のもと少赤く、筋おほく皮厚く、少かどたちて、葉あらく、しはみて見ゆるは、料理によからず、今一種、あかみく皮うすく、葉うすく丸く、茎もかとかどしからぬあり、是内にすぢもすくなく、和らかにして味よし、えらびて作るべし、おほく作りては、春銭(ぜに)ぶきの時、料理にめづらし、花は薬とし、みそとし、漬物とす、