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重修本草綱目啓蒙
十/湿草
薇銜 一名徽蘅〈通雅〉 独揺〈同上、同名者数種、通雅に独揺有八、一羌活、一鬼臼、一鬼督郵、一天麻、一薇銜、一白揚、一栘楊、又媚薬有無風独揺草、又抱朴子に独揺芝と雲ふ、独揺芝は天麻のことなり、〉 増、一名没心草、〈附方〉 鹿胞草〈本経逢原〉薇銜は総名なり、大呉風草小呉風草の二種に分つ、大呉風草(○○○○)は俗に張良草と称する者なり、此草本名嘲弄草なるお誤て張良草と雲、京師相国寺鳳瑞軒の僧秀周、入唐の時、此種お取帰り、菴後に種て嘲弄す、草と鐘逵の墓に生ずるに因て、鐘逵草と雲と、結毦録見たり、今は山中に自生多し、葉形免児傘(やぶれすげがさの)葉に似て大なり、故に和州方言に此草おもやぶれがさと雲、濃州にてたいみんがさと雲、春旧根より数葉お叢生す、漸く円茎お抽て高四五尺、二三葉お互生す、夏月茎の梢に多く枝お分ち花お開く、橐吾(つわぶき)花の形に似て大さ二寸余、弁心共に黄色也、蕚も亦橐吾に似て大なり、一種苗小なる者あり、樊噲草(○○○)と雲、此は茎に斑なし、張良草には黒斑あり、又一種樊噲草の紫茎なる者(○○○○○○○○○)あり、形状は異ならず、大和本草には大なるお樊噲草とし、小なるお張良草とす、両説なり、何れにても大小通じて大呉風草なり、小呉風草(○○○○)は救荒本草に載ところの免児傘なり、和名やぶれがさ(○○○○○)、救荒の図に能合へり、深山幽谷に多生ず、嫩なる者は一根一葉にして、破れたる傘お張れる形の如し、年お経ること久しきものは、別に茎お抽ること二三尺、二三葉互生し、秋の初茎端に長穂おなし、まばらに花お綴る、花形鬼督郵(はぐま)の花に似たり、黄白色にして微しく淡紫色お帯ぶ、熊谷道詮の薇銜考証は、図もありて詳に弁ず、草木弁疑に、大呉風草お張良草とし、小呉風草お樊噲草とするは穏ならず、