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重修本草綱目啓蒙
十/湿草
紅藍花 くれのあい(○○○○○)〈和名抄〉 くれない(○○○○) すえつむはな(○○○○○○)〈源氏物語〉 丹華〈和方書〉 べにのはな(○○○○○) くれないのはな(○○○○○○○)〈雲州〉 はな(○○)〈仙台〉 紅花 一名紅蘭〈事物紺珠〉 紅花菜〈救荒本草、又山丹花未だ開かざる者お乾し、食用にするおも紅花菜と雲、〉秋分に子お下し、便ち生ず、葉は細長くして黄緑色、長さ二寸或四五寸、葉辺及中心に〓刺あり、春に至て茎お抽で、高さ三五尺に至る、其茎にも刺あり、葉は互生す、梢葉は枸骨(ひらぎの)葉の如し、夏月枝の末ごとに花お生ず、梂おなして蒼朮苑梂の如く刺多し、細弁梂上に出て〓(あざみの)花の形に似り、紅黄色なり、今朝弁おつみ采れば明朝復出、此の如くすること数日にして尽く、故に源氏物語に末摘花と名く、弁お摘には必早晨お以てす、故に集解に乗露采之と雲り、花後実お梂中に結ぶ、熟して大さ赤小豆の如し、一方尖り色白くして光あり、唐山にてはこの実お搾り、油お取り灯に点ず、又杭州にて金の扇面お偽るに、銀紙に此油お刷き、火にて炙りなすと、天工開物に見たり、薬に入るヽには花弁お用ゆ、即紅花なり、数種あり、ぜにばなと雲は、扁くつくねて銭の形になしたるお雲、集解に捏成薄餅と雲是なり、是は多く染家に用ゆ、奥州仙台より出るお上品とす、出羽の山形これに次ぐ、同州谷知(やち)、奥州の三春之に次ぐ、奥州の者はその形小にして薄し、これは弁おとりて少づつ集め、席の上にならべ、其上に席お蓋ひ、おもしおかけ、銭形に造るものなりと雲、肥後より出るは大さ二寸許、厚さ五分許、円形にして〓し、これは竹筒中に入れ搗かため、出して切たる者なりと雲、又筑後より出るは薄して大さ三寸許、是は奥州より出るものと、其製同じと雲、又銭ばなに成さずして、弁お摘采たるまヽにて出すものあり、これおつみなりと雲、又じばなとも雲、唐山にてこれお散花と雲、伊勢美濃より出るは皆つみなり也、薬には多く此つみなりお用ゆ、薬四にて陳旧にして色の変じたるお、薬紅花と名け售る、是甚悪し、新なるお撰び用ゆべし、若し無ときは銭ばなお砕きて、ほどき花と雲お用ゆべし、