[p.0771][p.0772]
重修本草綱目啓蒙
十二/湿草
鬼鍼草 せんだんぐさ(○○○○○○) きつねばり(○○○○○)〈備後〉 からすばり(○○○○○)〈奥州〉 石くさ(○○○)〈越後〉 おにばり(○○○○) きつねのや(○○○○○) きつねのやり(○○○○○○) はさみぐさ(○○○○○) ぬすびと(○○○○)〈播州、衣服に実の著くものお、総てぬすびとヽ雲、いとろべ(○○○○)とも雲ふ、〉 きつねのはり(○○○○○○)〈同上〉 ものつき(○○○○)〈長州〉 おにのや(○○○○)〈芸州〉 ものぐるひ(○○○○○)〈豊前〉 しぶつかみ(○○○○○)〈勢州〉 やぶぬすびと(○○○○○○) ぬすびとのはり(○○○○○○○)〈共同上〉原野に甚多し、宿子地に在りて春自ら生ず、方茎葉は練(せんだんの)葉に似て毛あり、枝葉ともに対生す、九月に至り、枝梢ごとに花お開く、五弁淡黄色、大さ四五分、その蒂緑色、形常十(かふぞりな)八の花蒂の如し、花終れば蒂折き、五分許の細刺多く毬おなして、栗の彙の如し、是其実の熟するなり、刺の末ごとに倒叉あり、若し衣服に触れば、粘著して抜去がたし、実熟して苗根倶に枯る、又一種大葉なるものあり、はたうこぎ(○○○○○)と雲、又一種小葉なるものあり、増、天保年間、蛮種の鬼鍼草舶来す、蛮名どるれけんぶる(○○○○○○○)と雲、春月種お下して、苗お生ず、方茎にして高さ二三尺その節紫色お帯ぶ、葉茎に対生す、形尋常の鬼鍼草に似て、悉く三葉にして毛茸なし、夏月葉間に枝お分ち、苞お結び花お開く、五弁にして白色、大さ四分許、中に黄蘂あり、花後実お結ぶ、長さ四分許、末に岐あり、これも衣服に著く、又秋種お下すものは、冬お経て春に至て茂盛す、