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古今要覧稿
草木
おけら 〈白朮〉おけらの物に見へしは、出雲風土記お始とし、又うけらともいふ、〈万葉集◯中略〉赤白二種共に、山中におのれと生出しものよろしきよし、大同類聚方に見へたれど、今の本は後世者偽撰なるべければ、いまだたしかに証となしがたし、されども此もの美濃国に産せしは、さらにもいはず、出雲国意宇郡、島根郡、秋鹿郡、楯縫郡、飯石郡等に産し、〈出雲風土記〉また山城、大和、尾張、三河、駿河、安房等、凡三十箇国より貢せしに、〈延喜典薬寮式〉武蔵国よりは奉らず、されど万葉集にむさしのヽうけらがはなとよみ、今も此国に至て多く、かつ色にづなゆめといへる歌の意お按るに、即今の白花のものとしらる、また希に赤花のものもあり、あかおけらといふ、〈増補多識編◯中略〉たヾし日本書紀以下延喜式等、白朮おあげて、蒼朮おのせず、是によりて考ふれば、当時いまだ蒼朮の名お立られざりしにや、