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重修本草綱目啓蒙
八/山草
鬼督郵 はぐま(○○○) かさな(○○○)〈俗名〉 とちな(○○○)〈加州〉 ゆうだちがさ(○○○○○○)〈尾州〉 おにのからかさ(○○○○○○○)種類多し、真の鬼督郵に充るものは車葉のはぐま(○○○○○○)、種樹家にて円葉のはぐまと呼もの是なり、深山の幽谷にあり、一根一茎直上す、長さ一尺許、葉は枇杷葉の形に似て小く、鋸歯なく、背に毛なし、八九葉茎頂に対生して車輪の如し、その中心より又一茎お出す、長さ一尺許、秋に至て穂お成し、白花お開く、形蒼朮の花の瘠小なるが如し、長さ七八分、闊さ一二分、末は開きて細弁お布くこと三四分、花後絮おなす、飯帚の形の如し、根細長く一科に数多く生じ、色黒く味苦し、髢様(かもじて)の威霊仙の如し、一種叡山はぐま(○○○○○)あり、亦深山に生ず、是もかさなと雲、一根一茎長三四寸、葉は草綿(わた)の葉の如くあらき切込あり、六七葉対生し、中より茎お出し、花お開くこと車葉の者と同じ、隻微く小なり、根も亦同じ、一種かしは葉のはぐま(○○○○○○○○)あり、一根一茎長さ一尺許葉互生す、形ち槲葉に似て短し、一種もみぢ葉のはぐま(○○○○○○○○)あり、形ち叡山はぐまに似て、葉は草綿葉より岐ふかくして、もみぢに似り、此一種にもみぢさうと雲あり、葉の形同して互生す、一種紫背のはぐま(○○○○○○)あり、紀州熊野に多し、又和州深山にもあり、葉は叡山はぐまの葉に似て長くして厚し、其肌虎耳草(ゆきのした)の葉の如し、面は緑色にして白斑あり、又紫斑のものあり、背は紫色なり、共に花は上に同じ、此等みな鬼督郵の類なり、又大和本草の図にくまがへさうお鬼督郵に当る説お載す、集解保昇の説に如傘と雲、根横生無鬚と雲の文に拠るなり、此説も亦近し、