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採薬使記
上/奥州
昭任曰、蝦夷松前の内より一種の木耳お出す、其形ち桑木耳の如くにして甚だ大なり、その色白く油ぎりつやよし、味ひ甚だ苦く少し甘し、土人諸病お治すと雲ふ、専ら腹痛疝気痛に用ひて妙なりと雲ふ、此もの山中谷中に大樹ありて、其樹年お経て倒れ朽て、其枯株より此木耳お生ず、其大樹の名お峯ばりと雲ふ、光生按ずるに、此木耳おえぶりこ(○○○○)と雲ふ、又あかすとうとも雲ふ、多く撻靼の地に生ず、其所おからふとヽ名づく、又北高麗とも雲、蝦夷が島の北界なり、此物多くは沙浜の中に生ると雲ふ、其形ち鎖陽の類の如し、又茯苓に似て濃ならず蝦夷人の伝に曰ふ、積聚疝気一切の腹痛に用ゆ然れども虚弱の人には斟酌すべしと雲ふ、或曰漢名朱崖芝なるべし、