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大和本草
十一/薬木
茯苓 茯苓茯神皆老松の根下に生ず、茯苓は松根おはなれてつヾかず、茯神は松根に附結してつヾけり、故茯神は其内に根つらぬけり、松根の蔓の如く長きに、左右に連なり附て多く生ず、譬へばほどの蔓の長きに、芋の子の如なる丸根多く連り附くが如し、故に和訓に松ほどヽ雲なるべし、本草の雷学が説お見れば、其まヽきざみ用ゆべからず、皮お去きざみつきくだき細にし、水に入かきまぜ、うかぶおふるひにてこして、其ふるひの内にとまるは、茯苓の赤筋なり、すつべし、これお其まヽ用れば目お損ずといへり、今案に性よきは赤筋なし、其まヽ用べし、今西州より出るは性よくして赤筋なし、其まヽきざみ用べし、赤筋あるは最下品なり、白きおなまびのときにおさめおけば、其色十分に白からざれども、白茯苓とすべし、生なるお即時に土気お洗去、皮ともに横に切て薄片とし乾すべし、遅くわれば赤色生ず、白苓のそんじて色赤くなりたるお、薬四に赤茯苓とす、用ゆべからず、赤茯苓は初より赤し、薬四にうる白茯苓は、皮お去てかき餅の如にす、潔白にして堅し、但多くは茯神なり、択ぶべし、皮ながら切へぎたるお用ゆべし、近年は茯苓のある松お目きヽしてほるに、必其下にあり、本草にも此事あり、時珍が説可考、見淮南子、千年之松下有茯苓と雲、典術言、松脂入地千歳為茯苓、今案わか木にも茯苓あり、されども老樹の根にあるには性不及、