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本草弁疑
四/木
茯苓(ぶくりやう)諸山松下に多生ず、今は松山にあらざれども、草山にも多く生じて、葛蕨(くずわらび)などお堀時、自然と堀出せり、往昔松山にして松気相残て今に生ずる者か、俗に蕨茯苓と雲、茯苓の裏に蕨の根孕てあるなり、西国より円ながら大坂へ出お、薬家に求之て輪に切て乾す、内赤く外白と、内外共に白と赤と、堅実と軽虚と、大小と種々あり、堅実にして大なる、内外共に潔白なりと雲へども、軽虚なるは不可用、真の赤茯苓甚だ希なり、元と白お乾し損じて赤くなすなり、外白内赤者多し、是は大坂にて乾す時、能き日に乾せば片(へげ)われて所見悪き故に、不熟にして櫃に入、内にて自ら乾す、故に茯苓の内くみ腐りて赤く、外は一たび日に曝す、故に白し、薬力甚悪し、不可不択、亦是のみに非ず、採薬の者或姦商外見おかざりて、薬力お損亡する者甚多し、唯外見お不択、専ら性力お択て可用也、