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採薬録

茯苓 まつほど薩州の辺多く出す、琉球人之お中国に入る、彼人甚だ之お貴賞せり、其他処在最多し、凡風烈き処松樹の下に生ず、然ども海辺南風烈き処極て多し、風の為に精気お上に発すること不能、精気已根の下に伏して茯苓お生ず、苓は霊也、木根の貫きたるお茯神と雲、又色赤き者お赤茯苓と雲、各名お分つと雖ども、実は相同じ、房州の辺にては大松お伐り、三五年お経て其伐口少し朽たるお見て有無お知る、近年奥羽にも取出す、風烈き処或折枯、枝葉の大に衰へたるお見て、其四方二三尺、或は一二間お中お鉄杖にて頻に刺し試み、若し茯苓あれば鉄杖に附き、又手に覚えあり掘とり、其大なるは斗の如し、小なるは弾丸の如し、能く洗浄し、粗皮お去り水に浸し、一分四方に刻み、日乾すべし、之お角製と雲、又七八片となし清水に浸し、一宿お経て土気お出し日乾すべし、之お片きと雲、世俗雲、風雨なき夜煤竹にて松下お尋ね、茯苓あれば火滅す、其処お記して明日掘得ると雲は誤也、又蕨の根お掘て茯苓お得ると雲、是れ往昔其処に松樹有て、根〓残て生ずる者ならん乎、松岡氏の考也、