[p.0838]
日本山海名産図会

香蕈(しいたけ) 〈一名香菰(かうこ) 香菌(かうきん) 処蕈(しよじん)〉日向の産お上品とす、多くは熊野辺にも出せり、〈◯中略〉今和州吉野又伊勢山などに作出せるもの、日向には勝れり、其法は扶移(しで)の樹お多伐て、一所にあつめ、少し土に埋め、垣お結まはして風お厭、其まヽ晴雨に暴すこと凡一年計、程よく腐煉したるお候がひて、かの斧おもち擊て目お入置くのみにて、米泔お沃ぐこともなし、されども其始て生ふるはすくなく、大抵三年の後お十分の盛りとし、それより毎年に生ふるのすくなければ、又斧お入れつヽ年お重ぬなり、春夏秋と出て冬はなし、其内春の物お上品として、春香(はるこ)と称す、夏は傘薄く味も劣れり、又別に雪香(ゆきこ)と雲て、絶品の物は、縁も厚く形勢も全備へり、是は春香の内より撰出せるものにて、裏なども潔白なるお称せり、