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倭訓栞
前編九/古
こけ 古事記に蘿およみ、倭名抄に苔およめり、木毛の義なるべし、或は苺およめり、韻会に苔也と見ゆ、苔は水衣也と注せり、されど地衣草もいへり、又石衣おちいさきこけとよめり、石髪も同じ、東坡が詩に空余石髪掛魚衣といへれば、水衣も通じいふべし、又松蘿おまつのこけ、屋遊おやのへのこけとよめり、こけ衣、こけ席など皆みたてたる詞也、苔の袖、苔の袂など、桑門によめり、苔の戸、苔の庵などは、閑居の体おいふ也、