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採薬使記
中/相州
重康曰、相州箱根あしがらの関のあたりに、箱根草と雲ふお出す、土人の曰、元禄の頃、紅毛人江都参府の時、此草お見て曰、是れかつへれへんねれすと雲ふて、難産の薬に妙ありとて採らせける、故に一名おおらんだ草(○○○○○)とも雲ふ、これ本草に載する処の石長生なるよし、光生按ずるに、箱根草此比参府の紅毛人やんへつきと雲へる医に問ひしに、此草本国にてふらんちりいりよと雲ふ、此国とむまへやと雲ふ二け国より外になし、故に両国に来る時、採り持行と雲ふ、此草専ら産後産前の諸病に黒焼として白湯にて用ゆ、又湯火傷、あるひは髪の兀たるには、末とし、ほるとがるの油にてとき、付ると雲ふ、