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重修本綱草目啓蒙
十二/湿草
海金沙 すなぐさ(○○○○) かにぐさ(○○○○)〈大和本草に京師の名とす、然れども今はこの名お呼ばず、〉 かんづる(○○○○)〈同上〉 かにづる(○○○○) かなづる(○○○○) いとかづら(○○○○○)〈江州〉 たヽきぐさ(○○○○○)〈同上〉 はなかづら(○○○○○)〈西国〉 さみせんかづら(○○○○○○○)〈同上〉 つるしのぶ(○○○○○)〈江戸〉 さみせんづる(○○○○○○)〈和州〉 りんきやうぐさ(○○○○○○○)〈用薬須知後編〉 かにこぐさ(○○○○○)〈勢州〉原野に極て多し蔓草なり、三月宿根より苗お生ず、一二尺までは直立して草本の如し、故に禹錫説初生作小株高一二尺と雲、今の本に初の字お脱す、宜く補べし、苗長じて藤蔓細く堅し、長く草木上に纏ふ、其蔓お採り外皮お剥、されば中に堅き心あり、黄色にして光あり、三弦の線の如し、小児戯に両端お引て弾ずれば声あり、故にさみせんづると雲、葉は井口辺草(とりのあしくさ)の葉に似て深緑色、夏已後蔓の末に生ずる葉は甚細にして、海州骨砕(しのぶの)補葉に似て脚葉の形と異なり、秋に至て葉背ごとに、皆辺にそひて高く皺み、巻かへしたる状の如く見ゆ、其中に金沙お含む、脚葉には沙なし、其梢葉お採り紙お襯き、日乾すれば細沙自ら落て紙上にあり、収め貯へ薬用に入る、