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大和本草
五/菜蔬
薇(いのて/○) 召南草虫詩雲、陟彼南山、言采其薇、朱伝曰、薇似蕨而差大、有芒而味苦、山間人食之、謂之迷蕨、胡氏曰、疑即荘子所謂迷陽者、本草蒙筌曰、薇較蕨差大、味略苦、有芒亦潤大腸調中、猶消浮腫利水、いのては深山幽谷の内にあり、わらびに似て大也、毛あり、生なるは味苦し、ほして食すべし、其初生野猪の手に似たり、故にいのてと雲、紫期(ぜんまい)は一根より多く生ず、薇は然らず、似蕨而大に、有芒而味苦きこと、朱子詩伝に雲へるが如し、ぜんまひに不同、三才図絵にいへるも同、隻本草綱目に薇といへるは別の物なり、いのてには非ず、本草に紫期の一名お迷蕨と雲、朱子の詩伝に別名お又迷蕨と雲へり、然ればぜんまひもいのても同迷蕨と雲なるべし、かやうの同名異物多し、