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日本山海名産図会

昆布(こんふ)〈和名ひろめ、一名海布(かいふ)、〉是は六月土用中にして、常に採ることなし、同じく蝦夷、松前、江刺、箱館などにも採れり、小舟に乗り鎌お持ち、水中に暫くありて昆布お抱、是につられて浮む、皆海底の石に生ひて、長さ三四尺より十間計のものあり、たま〳〵には石ともにあぐるもあれども、十日計にして根自ら離る、長きはよき程に切りて、蝦夷松前の海浜の砂上家の上、往来の道に至るまで、一日乾すこと、実に錐お立るの隙もなし、暮に納めて小家に積み、其上に筵お覆ふこと一夜にして、夕浮きたるお荒昆布と雲、〈世俗に蝦夷の家は、昆布おもつて〓くと雲は、此乾したるお見たるなるべし、家はすべて板庇し板囲ひなり、〉色赤きお上品として、僅かに其階級おわかてり、又八九月の比自然打あぐるお寄せ昆布と雲、