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大和本草
八/海草
紫菜(あまのり) 本草水菜類に載たり、海中石に付て生ず、青色なり、取て乾せば色紫なり、又ほして色青きもあり味甘し、処々に多し、武州の浅草のり、品川苔、下総の葛西のり、雲州の十六島(うつふるひ)も、皆紫菜の類なり、うつふるひとは海中の苔おとり、露お打ふるひてほす故に名づくと雲、この苔の名によりて、其島の名おもうつふるひと雲、凡此のり諸州有之、地によりて形色少かはる、紫菜お食して腹痛するに、熱醋お少のめばよしと本草に見えたり、〈◯中略〉黒のり 若狭の海にあり、岩に生ず、臘月にとる、黒くうるはし味よし、経のひも 昆布に似て小也、広二三寸、長五六寸ばかり、食すれば脆く味よし、醋みそにて食す、鮫皮苔(さめのり) よこ五分許、長二三寸、青色なり、鮫皮の如なる星多くして、其処少高し、味は経の紐よりよし希有なり、〈◯中略〉奥津海苔 広六七分、或七八分、長五六七寸許、頗厚可食、紫色、水に洗ひ曝日則変為黄白色、駿州奥津にあり、