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重修本草綱目啓蒙
二十/水菜
紫菜 すむのり(○○○○)〈和名抄〉 むらさきのり(○○○○○○)〈同上〉 あまのり(○○○○)〈新校正〉 あまも(○○○)〈佐州〉一名索菜〈〓州府志〉凡そ紫菜は冬月海中の石に著て生ず、緑色なり、又海面に浮て浮萍の如し、海畔に小竹お多く立て置て、とり得て乾す時は、色紫にして味甘し、焙る時は褐色となる、紫菜は紫色の海苔お雲、総名なり、品類甚だ多し、国ごとに形色異なり、大抵武州浅草のりお第一とす、精粗あり、精なる者は形小く厚く、色深して黒みあり、品川にて紫菜お採り、浅草川にて製す、故に浅草のりと雲、粗なる者は形大にして色浅し、その赤色お帯る者は、上総の小滝のりなりと雲、諸州の紫菜数多く枚挙すべからず、下総に葛西のりあり、東葛西の桑川、舟掘、長島、二の江、今井等の村にて採製するお雲ふ、紀州に妹背のりあり、同あまのりあり、勢州にまどのりあり、一名格子のり、しやうじのり、是は細長きのりお、一筋づヽ縦横に格子の如く並べたるお雲、雲州の十六島(うつふるひ)のりは、質細く糸の如くにして〓なり、〈◯中略〉その大さ大抵二三尺、至て大なるは丈余なるもあり、大なる者お上とす、又闊さ一寸許にして、長く劈きて乾たるおかもぢのりと雲、又至て下品なるお、かきのりと雲、又みさきのりは、勢州のまどのりの如くに製し、色深紫にして光りあり、これお洗のりとも雲、又九十九(つくも)のりあり、石州のかもぢのりは、雲州のかもぢのりと同じ、又はちのすのりあり、塊に竅穴多くして蜂窩の形の如し、芸州の厳島のり、同広島のり、一名仁保のり、泉州のむしろのり、若州のなまのり、但州の瀬戸のり、一名但馬のり、城崎のり、同はかりのり、長州のむかつくのり、対馬のあまのり、同佐護のり、同鴨崎のり、越後の笠島のり、〓後の袖石のり、備前のふぢとのり、一名うきすのり、防州の三島のり、肥後の満願寺のり、豊前の小倉のり、豆州の三島のり、奥州の仙台のり、此外諸州に紫菜あり、朝鮮には紫衣と雲、又厳寒の時雪中に採おゆきのりと雲、〓後、越前、越後等にあり、其紫黒色なるお黒のりと雲、紀州、石州、〓後、若州、越前、能州等にあり、