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古今要覧
器財
令大尺〈度地尺〉大宝令の大尺は令前常用にして、即今の曲尺なり、〈その証はのちにいふべし〉その大尺といふ称お設けられて、度地銀銅穀にのみ用ひられしは、文武天皇即位のはじめ、壬申擾乱のヽちの弊風おあらためられんがために、律令お制せらるヽ時、常用の尺、全くかの唐の大尺とおなじかりし故に、彼の大尺といふ字おかり用ひられしならん、皇朝の令は李唐の令おうつされしかば、その令条多く唐律及び六典に合るにてしるべし、然れども全く李唐の制度によられしにもあらざることは、五尺一歩といふお用ひられて、二百四十歩お畝とすといふにはしたがはれずして、旧のごとく三百六十歩お段とせられしは、旧制三百六十歩の地おあらためらるヽこと便ならざりし故なるべし、大化の祖稲、大宝の祖稲と全くおなじきおみれば、令前の常用尺は令の大尺なる事疑ひなし、もししからずば、何ぞ度地にのみ大尺お用ひられんや、これその度地銀銅穀の類は、旧制にしたがはざれば制度のあたらしき際、姦民邪曲お濫妨にいたるがゆへに、大尺お用ひられて旧のごとくなされしとみえたり、