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俗説贅弁

たかばかりの説俗間の書に、たかばかりとは、竹に作れる曲尺也とあり、今按ずるに非也、たかばかりとは、人の長にて定る寸尺なり、是上古の法なり、神代巻に八尋殿とあり、これたかばかり也、内外宮内裏の間架お定むる、皆俗間の曲尺にて極めたるものにあらず、みなたかばかりより出たりとかや、延暦儀式帳などに、毎社皆曲尺お付たるは、たかばかりお匠尺に写したる物なり、匠尺は聖徳太子、異国の曲尺お用給ふよりおこりて、今に天王寺番匠の受伝ふる所なり、当世も民間の茅屋は、縄おひろどりて架おさだむ、是たかばかりの古法なり、弓にも人々のたかばかり有けれど、とり失ひて、今は七尺五寸といふめる、有職家には定て古伝有べし、唯矢ばかり、長ばかりお伝て、十二束三ぶせなどヽといふ、是故実のことばなり、