[p.0021]
独語
婦女の帯は、金襴お美麗の限とし、黒地に梅桜松お所々に織つけて、是お鉢の木の帯となづけて珍重しけり、広さ僅に鯨尺の二寸ばかり、紙お心として、綿などいる主ことなし、四月より八月迄、婦女の礼服に綿にて、広さ鯨尺の八分ばかり成るお、後お結てたる主お、つけ帯といふ、〈○中略〉男子も女子も十四五歳までは、長き袖お著るに、昔は鯨尺の一尺七八寸お極とせしに、貞享の比より二尺計になり、それより漸くます〳〵長くなりて、ちかき比は二尺四五寸になりぬと見ゆ、婦女の帯も、貞享元禄の比より、やうやく広くなりて、今は鯨尺にて八九寸におよべり、綿お心として褥の如し、男の肩衣といふ物、昔は麻の幅、鯨尺の八寸ばかりなりしに、貞享元禄の比より、幅一尺におよべり