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数学類聚

日本に三種の尺あり、呉服尺、鯨尺、曲尺なり、呉服尺は、衣類お裁ち縫ひするにいにしへは用ひたる也、今世はくじら尺お用ゆれども、古へはくじらざしは用ひず、呉服尺お用ひたる也、くじら尺より五分短き尺也、此呉服尺は、曲尺お五つに切りて、六つよせて、其長さお一尺につくり、一尺には十寸づヽ也、一寸には十分づヽにしたる尺也、これは前条に雲ふ所の周の例に准 じたる也、曲尺にては一尺二寸に当る也、くじら尺と雲は、鯨魚の鬚にて作りたるゆへの名也、是は曲尺お四つに切りて、五つよせて、其長さお一尺にしたる尺也、是も一寸には十分づヽ有り、一尺には十寸づヽ有也、前に雲ふ所の成陽の例に准じたる也、くじら一尺は、曲尺にては一尺二寸五分に当る也、今世通用、衣類お裁ち縫ひおするに用ゆる也、曲尺は、今世日本にて匠工の用ゆる尺也、則商の営造尺と同じ事也、くろがねお錬のべてつくるゆへに、かね尺と雲ふ也、