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塵添壒囊抄

夕撮事〈附升字事〉石(こく)、斗(と)、升(せう)、合(かう)、夕(しやく)、才(さつ)〈と〉雲、夕とは何ぞ、才(さつ)に於ては音義共に不審也、夕と書は僻字也、夕は詞積〈の〉反、暮也、亦は作【Kれ】夕、勺と書べし、時灼反、飲器也、十勺お為【Kれ】升、亦杓と作也、勺とは、すくふ也、手おくぼめてすくふ心也、今、日本には十勺お合と定たり、才に至ては正字お不【Kれ】知、本説お不【Kれ】見、短慮難【K二】及び【K一】、但音に付て推量せば、若是撮字歟、撮おばつまむとよむ、仲庸雲、夫地一撮土之多、及【K二】其広厚【K一】、載【K二】華岳【K一】而不【Kれ】重、振【K二】河海【K一】而不【Kれ】洩、万物載焉、夫水一勺之多也、及【K二】其不【K一れ】測、黿鼉鮫竜魚鼈生焉と雲取【Kれ】意、巨海と雲も一勺の水の所【Kれ】湛、厚地と雲も一撮の土所【Kれ】積也と雲也、然れば片時も学門に志し、仮染にも仁義お思はヾ、必積て道に至るべし、勧むる諭也、就【Kれ】之思に、十撮お一勺として撮と雲お、作りお略して、篇許お用歟、抄物に、或は作お書き、或は篇お用事、常の習也、其一升二升お一しゆく二しゆくと雲人あり、升には全くしくの音なし、字お誤て、叔の字と思へる歟、叔は書六反、わたるとよむ、又伯叔は父の兄弟と注せり、升字は篇は勺、作は十文字也、されば字注にも、十勺為【Kれ】升と雲お以て知べし、○按ずるに、勺お古来夕に作れり、勺の一体なり、淳化法帖東晋簡文帝書に、酌お〓に作れるにて知るべし、