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日本永代蔵

智恵おはかる八十八の升掻(○○)援に京の北山の里、かくれもなき三夫婦とて、人のうらやむ人あり、〈○中略〉此親仁八十八、〈○中略〉八十八歳の年のはじめに、誰かいひ出して升掻おきらせけるに、すなほなる竹のはやしも切絶るばかり、京都の諸商人是おのぞみけるに、商売に仕合あつて、いよ〳〵もてはやして、三夫婦の升かきとて、俵物はかるにこぼれざいわひあり、上京の長者、此升かきにて白銀おはかりわけて、三人の子どもにわたしけるとなり、